血尿・尿蛋白を指摘された

血尿

血尿とは、尿中に血液成分(赤血球)が混入した状態を指します。腎臓の濾過機能の障害で起こる糸球体血尿と尿の通り道で出血が起きている非糸球体性血尿に分けられます。

糸球体性血尿

腎臓の血液から尿をつくる部分を糸球体と言います。この糸球体に異常があると尿の中に血液成分(赤血球)が漏れ出てしまうことがあります。これを「糸球体性血尿」と言います。漏れ出た赤血球の形がおかしかったり(変形赤血球と言います)、尿蛋白を認める場合は糸球体性血尿の可能性が高くなります。

糸球体性血尿の原因

原因としてはさまざまな病気がありますが、最も重要なのはIgA腎症です。IgA腎症は進行すると腎機能が悪化して透析になる可能性があります。「かぜをひいた後に血尿を認める」はIgA腎症に特徴的です。しかしながら、確定診断には腎生検(腎臓に針を刺してごく一部の組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査)が必要です。

糸球体性血尿の対応

血尿に加えて、高度の尿蛋白を認める場合や、病歴よりIgA腎症が強く疑われる場合には、確定診断のために腎生検を提案します。当院では腎生検は実施困難なので、専門病院を紹介します。尿蛋白を認めるもののその量が少ない場合や特別な症状を認めない場合には、定期的に経過観察を行い、必要であれば、腎臓を保護するための薬剤の使用を検討します。

非糸球体性血尿

糸球体で尿が作られてから体の外に出てくるまでの通り道を尿路と言い、尿管、膀胱、尿道などからなります。この尿路で出血して血尿がおこる場合を「非糸球体性血尿」と言います。

非糸球体性血尿の原因

以下に示すさまざまな病気が原因となります。

尿路結石 結石が尿路の粘膜を傷つけて出血します。尿管結石では激しい腰痛やわき腹の痛みを伴います。
尿路感染症 排尿時痛や頻尿、残尿感、発熱などを伴います。尿検査で診断できます。
薬剤性 血液サラサラの薬や一部の免疫をおさえる薬などで尿路から出血することがあります。
尿路の腫瘍 高齢者に多く、喫煙がリスク因子とされています。

非糸球体性血尿の対応

尿路結石の場合は痛み止め、尿路感染症の場合は抗菌薬の使用など、原因疾患の治療を行います。一方で、血尿で常に頭に入れておかねばならないのは腫瘍の存在です。当院では尿細胞診(尿の中に含まれる細胞を顕微鏡で調べ、がん細胞など異常な細胞がないか確認する検査)や超音波検査で腫瘍の検索を行いますが、全ての腫瘍を発見できるわけではありません。必要と判断した場合には専門病院に紹介します。

その他

尿検査で「血尿がある」と指摘された場合でも、必ずしも腎臓や尿路の病気が原因とは限りません。女性の場合、月経(生理)の血液が尿に混ざってしまい、血尿のように見えることがあります。したがって、月経中の尿検査は避けることが推奨されます。


尿蛋白

尿蛋白とは尿中に蛋白質が混入した状態を指します。腎臓の濾過機能の障害で起こります。

尿蛋白の原因

生理的な尿蛋白

一時的なものであり、休養すると改善することが多いです。

運動性尿蛋白 激しい運動後に起こる一時的な尿蛋白です。
腎臓への血流の低下や負担の増加が原因と考えられています。
起立性尿蛋白 立位時に起こる一時的な尿蛋白で若い人に多いです。
重力変化による腎臓のうっ滞が原因と考えられています。
発熱時や脱水 尿が濃くなって一時的に尿蛋白を認めることがあります。

病的な尿蛋白

さまざまな原因で起こります。代表的なものを示します。

糖尿病性腎症 糖尿病の代表的な合併症です。腎機能が落ちる前に大量の尿蛋白が出現することが特徴です。
ネフローゼ症候群 急に発症することが多いです。全身がむくみ体重が増加します。
IgA腎症 血尿と尿蛋白の両方が認めることが多いです。

尿蛋白の対応

先ずは再検査を行い、一時的なものか、持続的なものかの評価を行います。

再検査の結果、尿蛋白が認められない場合

生理的尿蛋白と判断します。病気ではないので治療の必要はありません。

再検査の結果、尿蛋白が認められた場合

病的尿蛋白と判断します。経過の長い糖尿病があるなど、糖尿病性腎症が明らかな場合には、腎臓を保護する薬剤の使用を検討します。原因がわからず、尿蛋白が多い場合は腎生検を提案します。当院では腎生検は実施困難なので、専門病院を紹介します。

慢性腎臓病(CKD)における尿蛋白の問題点

腎機能の異常が3か月以上にわたり続いている状態をCKDと言います。CKDでは尿蛋白の量が多い程に将来的に透析になってしまう可能性や心臓の病気により死亡する可能性が高いことが明らかになっています。そのため、治療としては、この尿蛋白を減らす効果のある薬剤が使用されます。従来はそのような薬剤は限られていましたが、新しい薬剤が開発され、近年では治療の選択の幅が広がってきています。当院では、専門医の知見を活かし、病態の配慮した適切な薬剤の選択を行います。


よくある質問

血尿があると言われましたが、放置しても大丈夫ですか?

血尿の原因は一時的なこともありますが、腎臓病や尿路の腫瘍など重大な病気のサインであることもあります。放置すると治療が遅れる可能性があるため、早めに当院を受診してください。必要に応じて追加検査や専門医への紹介を行います。

尿蛋白が出たのですが、すぐに治療が必要ですか?

尿蛋白は運動や発熱などで一時的に出ることもあります。ただし、糖尿病や腎臓病の初期症状のこともあるため、再検査で確認することが大切です。継続して見られる場合は治療や経過観察が必要になるので、必ずご相談ください。

血尿と尿蛋白が両方あるとどうなりますか?

両方が同時に見られる場合、糸球体という腎臓の大切な部分に異常がある可能性が高まります。代表的なのはIgA腎症などの腎炎です。進行すると腎機能が低下してしまうこともあるため、放置せず早めに受診してください。

健康診断で異常を指摘されたのですが、症状がないので心配しなくてもいいですか?

血尿や尿蛋白は、症状がなくても進行する病気のサインであることがあります。自覚症状が出るころには病気が進んでいることも少なくありません。健診で異常を指摘された場合は、症状がなくても早めの受診をおすすめします。

血尿や尿蛋白があると必ず透析になりますか?

必ず透析になるわけではありません。早期に発見して適切に治療や生活管理を行うことで、多くの方は腎臓の働きを長く保つことができます。不安に思った時点で受診していただくことが、腎臓を守る一番の近道です。