苦しくて横になれない(起坐呼吸)

苦しくて横になれない…それは「起坐呼吸(きざこきゅう)」

「ベッドに横になると息苦しくなる」「枕を高くすると少し楽になる」「座った姿勢でしか眠れない」――そんな経験はありませんか?これは医学的に「起坐呼吸(きざこきゅう)」と呼ばれ、横になることで呼吸が苦しくなり、上体を起こすと楽になる状態を指します。


起坐呼吸の原因

起坐呼吸を引き起こす病気には、いくつかの原因があります。代表的なのは心不全ですが、気管支喘息の発作でもみられることがあります。

心不全

心不全とは、心臓が全身に血液を送り出す力(ポンプ機能)が低下した状態です。心臓の働きが弱くなると、全身から戻ってきた血液を心臓から送り出すことができなくなります。結果として、血液がうっ滞して肺に水分が染み出して呼吸が苦しくなります。仰向けになると、下半身にたまっていた血液が重力の影響で心臓に戻りやすくなり、心臓の負担が一時的に増加します。これにより、さらに肺の血流が増えて水分がしみ出し、息苦しさが強まります。このように横になると呼吸がつらくなり、座っている方が楽に感じる症状を「起坐呼吸」と呼びます。心不全では、こうした呼吸の変化に加えて、足のむくみ、急な体重増加、夜間の頻尿、階段や坂道での息切れなどもよく見られます。これらの症状がいくつか当てはまる場合は、早めに医療機関での評価をおすすめします。

気管支喘息発作

気管支喘息は、気道に炎症が起こり、ちょっとした刺激でも息苦しさや咳、ゼーゼーという音(喘鳴)などの症状が出やすくなる状態です。特に夜間や横になると症状が出やすいのは、体がリラックスしている時間帯に、気道が狭くなりやすくなるためです。また、横になることでのどや気道に分泌物がたまりやすくなり、それが刺激となって咳や呼吸困難を引き起こすこともあります。そのため、眠ろうとすると急に苦しくなったり、座っている方が呼吸が楽に感じられることがあります。これらの症状が繰り返される場合は、喘息発作が関係している可能性がありますので、早めの受診をおすすめします。

気管支喘息


起坐呼吸の検査

起坐呼吸がある場合、心臓や肺の働きに問題がないかを確認するための検査を行います。
症状の原因によって検査内容は異なりますが、代表的なものを以下に示します。

問診・診察

まず、持病や症状が出る状況、体重の変化などを詳しく伺います。診察では喘鳴や心雑音、下肢のむくみの有無などを評価します。

胸部X線検査

心臓の大きさや肺のうっ血(血液がたまった状態)を確認します。心不全が疑われる場合に非常に有用です。

血液検査

血液検査では、BNP(心臓から分泌されるホルモンで、心臓の負担を示す)や腎臓・貧血の状態などを調べます。

心電図検査

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、不整脈の有無を確認します。

心エコー検査(超音波検査)

心臓の動きや弁の状態、心室の大きさ、心臓のポンプ機能を詳しく評価できます。心不全の診断に最も重要な検査です。

これらの検査結果をもとに、原因となっている病気を特定し、適切な治療を行います。


起坐呼吸の治療

原因によらず、起坐呼吸のある場合は、重症化している可能性が高く、入院での治療が必要になることもあります。治療により肺の水分が減ったり気道の炎症が落ち着いたりすると、呼吸は次第に楽になります。

心不全の治療

主に利尿剤を用いて水分を体外に出すことで、肺にたまった水を減らします。並行して心不全を起こしている原因を調べます。

気管支喘息発作の治療

気管支拡張薬で気道を広げつつ、ステロイドで炎症を抑える治療が行われます。

気管支喘息


よくあるご質問

起坐呼吸とはどのような状態ですか?

横になると息苦しくなり、上体を起こすと呼吸が楽になる状態をいいます。主に心臓の働きが弱っているときに起こり、心臓が血液を十分に送り出せないことで肺に水分がたまり、呼吸がしづらくなります。

横になれないときはどうすればいいですか?

枕を高くしたり、背もたれのある椅子で休んだりすると呼吸が楽になります。ただし、これはあくまで一時的な対処にすぎません。起坐呼吸は進行した心不全などを示すことが多いため、必ず医療機関を受診してください。

どんな病気で起坐呼吸が起こりますか?

最も多いのは心不全ですが、気管支喘息の発作でもみられます。どちらも肺に空気が入りにくくなり、呼吸がしづらくなる点が共通しています。

気管支喘息

息苦しさが夜に強くなるのはなぜですか?

夜は体がリラックスして血流がゆっくりになるため、下半身にたまっていた血液が心臓に戻りやすくなります。心臓の働きが弱っていると、その血液をさばききれず、肺に水がたまりやすくなって息苦しさが強まります。

起坐呼吸があるときは救急に行くべきですか?

呼吸が苦しくて横になれない、息をするたびにゼーゼーする、会話が途切れるほど息苦しいといった場合は、救急受診が必要です。軽い症状でも繰り返すようなら、早めに内科を受診してください。

放っておくとどうなりますか?

放置すると、心不全や呼吸器疾患が進行して命に関わることがあります。夜に息苦しくて目が覚める、枕を2枚以上重ねないと眠れないなどの症状がある場合は、放置せずにすぐに医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。