血清クレアチニンが基準値より高い

血清クレアチニンとは

血清クレアチニンは、腎機能を調べる代表的な血液検査です。腎機能が低下すると、血液中のクレアチニンが増えて数値が高くなります。健康診断の結果をどう見るかの目安を、下にまとめます。

 

異常なし

軽度以上

要再検査・生活改善

要精密検査・治療

男性

1.00以下

1.01~1.09

1.10~1.29

1.30以上

女性

0.70以下

0.71~0.79

0.80~0.99

1.00以上

※日本人間ドック・予防医療学会 2025年度判定区分表より引用

クレアチニンとは

クレアチニンは、筋肉を動かすエネルギー代謝の過程で生じる老廃物です。通常は腎臓から尿として排出されますが、腎機能が低下すると体にたまり、数値が上がります。

クレアチニン値に影響する要因

クレアチニンは腎機能の指標として有用ですが、次のような要因でも変動します。

筋肉量

  • 男性は女性より筋肉が多いため、基準値が高めになります。
  • 運動習慣のある方は、腎機能が正常でも高めに出ることがあります。
  • 高齢者や筋肉量が少ない方は、腎機能が低下していなくても低めに出ることがあります。

食事

赤身肉やプロテインを摂取した直後は、一時的に高値を示すことがあります。

早期の腎機能低下は数値に出にくい

腎機能が半分程度まで低下しないと数値に反映されにくいことがあります。そのため、eGFR(推定糸球体濾過量)やシスタチンCといった他の検査と組み合わせて評価することが大切です。


腎機能を調べるその他の検査

血清クレアチニンだけでは腎機能を正しく反映できない場合があります。そのため、補助的な検査も併せて行います。

eGFR(推定糸球体濾過量)

血清クレアチニンに年齢や性別を加えて計算し、腎臓がどのくらい血液をきれいにできるかを示す指標です。一般的に60 mL/分/1.73m²未満で腎機能低下とされています。健康診断の結果をどう見るかの目安を、下にまとめます。

異常なし

要再検査・生活改善

要精密検査・治療

60以上

45.0~59.9

44.9以下

※日本人間ドック・予防医療学会 2025年度判定区分表より引用

シスタチンC

シスタチンCは血液中の別の老廃物の指標で、筋肉量や食事の影響を受けにくい特徴があります。特に、筋肉量が極端に多い方や少ない方、プロテイン摂取が多い方に有用です。


クレアチニン高値・腎機能低下への当院での対応

当院では、健診や診察でクレアチニン値が高い場合に、以下の手順で評価と対応を行います。

慢性的に高いかの確認

一時的な脱水や食事の影響でも数値が上がることがあります。まず再検査を行い、持続的に高いかどうかを確認します。

腎機能低下を本当に反映しているか評価

筋肉量や食事の影響を考慮し、必要に応じてシスタチンCで再評価します。クレアチニンとシスタチンCの両方が高い場合は、腎機能が実際に低下していると判断します。

急性腎障害か慢性腎臓病かの評価

腎機能低下が見つかったときに大切なのは、それが急性なのか慢性なのかを見極めることです。
  • 急性腎障害(腎機能が急に落ちる状態)では、原因を取り除けば改善する可能性があります。
  • 慢性腎臓病(CKD)(腎機能が少しずつ落ちていく状態)では、完全に元に戻すことは難しいですが、進行を遅らせることが可能です。
超音波検査で腎臓の大きさや形を確認することが、区別の参考になります。
  • 腎臓が正常大または腫れている場合
    →急性変化の可能性があります。
  • 腎臓が小さく萎縮している場合
    →慢性腎臓病が疑われます。
  • 腎臓に尿がたまって腫れている場合(水腎症)
    →尿路閉塞の可能性があり、原因を取り除けば改善が期待できます。

原因の検索

尿蛋白や炎症の有無を調べ、より詳しい検査が必要な場合は腎生検(腎臓の組織を一部とって調べる検査)を行うことがあります。その際は専門医療機関をご紹介します。


よくある質問

クレアチニンが高いと必ず腎臓病ですか?

必ずしもそうではありません。筋肉量の影響を受け、プロテイン、食事、脱水などでも一時的に高くなることがあります。正確に判断するためにも早めに当院を受診してください。患者様の状況に合わせて追加検査を検討し、診断していきます。

どのくらいの値で注意が必要ですか?

基準値を超えた場合は注意が必要です。特に慢性腎臓病(CKD)は早期治療が重要です。少し高いだけでも放置せず、医師と一緒に評価することが大切です。

健康診断でクレアチニンが高いと言われました。どうすればいいですか?

まずは腎臓内科を受診して再検査を受けましょう。

腎臓内科

腎機能は元に戻りますか?

急性腎障害であれば、原因を治療することで改善する可能性があります。一方、慢性腎臓病は元に戻すことは難しいですが、進行を遅らせることは可能です。

薬でクレアチニンを下げられますか?

クレアチニンを直接下げる薬はありません。ただし、糖尿病高血圧の治療薬の一部には腎臓を守る効果があり、進行を遅らせることができます。

透析はどれくらいの数値になったら必要ですか?

透析導入は数値だけで決まるものではありません。目安としてクレアチニンが7〜8 mg/dL前後になると検討されますが、尿量の減少やむくみ、倦怠感など全身状態を総合的に判断して決めます。

クレアチニンが少し高いだけなら、運動や筋トレは控えた方がいいですか?

基本的に、軽度のクレアチニン上昇だけで運動や筋トレをやめる必要はありません。むしろ適度な運動は腎臓や全身の健康維持に有益です。

プロテインやサプリは腎臓に悪いですか?

腎機能が正常な方であれば、適量のプロテイン摂取がすぐに腎臓に悪影響を与えることは少ないと考えられています。 ただし、腎機能が低下している方では、過剰な蛋白質が腎臓に負担となることがあります。サプリメントも種類によっては腎臓に影響を与えるものがあるため、腎臓の状態に不安がある方やすでに腎臓病のある方は、自己判断せず医師にご相談ください。

腎臓が悪くならないように、定期的に検査を受けた方がいいですか?

はい。腎臓病は初期には症状が出にくいため、健康診断や血液・尿検査で早めに見つけることが大切です。特に糖尿病高血圧のある方は、定期的な検査が推奨されます。

健康診断

生活で気をつけることはありますか?

腎機能を守るためのポイントは以下の通りです。

  • 塩分を控える(特に加工食品やインスタント食品)
  • 適切な水分補給を心がける(持病がある方は医師に相談)
  • 蛋白質を摂りすぎない(極端な制限はせず、医師と相談)
  • 禁煙と節酒
  • 血圧や血糖のコントロールを続ける