肥満と肥満症
肥満や肥満症を正しく理解するためには、まず「どのように体重を評価するのか」を知ることが大切です。そこで最もよく使われる指標がBMIです。以下では、BMIの意味、肥満の基準、そして肥満症の考え方について順に説明します。
BMI(Body Mass Index)とは
BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値で「太りすぎ・痩せすぎ」を評価する指標です。BMIが極端に高い場合や低い場合には、健康リスクが高まることが知られています。病気のリスクが最も低いのはBMI22前後とされ※1、この値が「標準体重」の基準になっています。
※1:Int J Obes. 1991 Jan;15(1):1-5.
肥満とは
肥満とは、体に脂肪が過剰にたまった状態を指します。アスリートのように筋肉が多くて体重が重い場合は肥満には当たりません。脂肪量を正確に測るには特殊な医療機器が必要なため、一般的にはBMIが代わりに使われ、BMI25以上で肥満と判定されます。なぜ、BMI 25かと言いますと、普通体重(20≦BMI<24)と比べて高血圧や脂質異常症を発症するリスクが2倍になると言う研究※2があるからです。また、日本人は欧米人よりもBMIが低い段階から合併症リスクが上がることがわかっています。
※2:肥満研究.2000;6:4-17.
肥満症とは
肥満症とは、肥満(BMI≧25)に加えて、体重が原因で健康に悪い影響が出ている、または出そうな状態とされています。
肥満に関連する病気には、
糖尿病、脂質異常症、高血圧症、高尿酸血症・痛風、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、脂肪肝、月経異常・女性不妊、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症、肥満関連腎症など多くのものがあります。
これらの病気は、体重を減らすことで予防や改善が期待できます。
肥満症と生活習慣病
肥満が進むと、血糖値や血圧、コレステロールが上がりやすくなります。お腹まわりに脂肪が増えると、体が血糖値をうまく下げにくくなり、糖尿病になりやすくなります。また、血圧や血液中の脂質にも悪い影響を与え、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。体重を少し減らすだけでも、これらの数値は改善することが知られています。肥満症の治療は、将来の大きな病気を防ぐための医療です。
肥満症と腎臓病
肥満は腎臓にも大きな負担をかけます。体重が増えると、腎臓にかかる負担が増え、その状態が長く続くことで、少しずつ腎機能が低下していくことがあります。さらに、肥満は糖尿病や高血圧を引き起こしやすく、これらは慢性腎臓病の主な原因です。早い段階で体重を管理することは、将来の腎機能低下を防ぐことにもつながります。当院では血液検査で腎臓の状態を確認しながら、安全に減量を進めます。
メディカルダイエットとは
メディカルダイエットとは、医師の管理のもとで行う減量治療です。食事・運動だけでは体重が落ちにくく、肥満のために健康への影響が心配される方に対して、GLP-1受容体作動薬などを用いて、食欲をコントロールすることで体重の減量を図ります。南流山内科トータルクリニックでは、GIP/GLP1受容体作動薬を用いたメディカルダイエット(自由診療)に対応しています。
当院のメディカルダイエットの目的
当院では「体重を減らすこと」だけを目的とするのではなく、「健康寿命を延ばすための減量」を目指しています。
GIP/GLP1受容体作動薬とは
GIPとGLP-1という2種類のインクレチン受容体に作用する薬剤で、週に1回、皮下注射をします。以下に示す作用により、高い減量効果が示されています。
食欲を抑える作用
脳の食欲中枢に働きかけ、「空腹感を感じにくくする」「少ない量でも満足しやすくする」などの効果が期待されます。
胃の動きをゆっくりにする作用
胃から腸への内容物の移動をゆるやかにし、食後の満腹感が持続しやすくなります。
脂肪や糖の代謝改善
長期的には内臓脂肪の減少やインスリン抵抗性の改善を通じて、体重・体脂肪の減少が期待できます。
GIP/GLP-1受容体作動薬は従来のGLP-1受容体作動薬と比べて高い減量効果が期待されますが、その機序はすべて解明されているわけではありません。
GIP/GLP1受容体作動薬の副作用
以下に添付文書に記載されている副作用を示します。
頻度の高い副作用(5%以上)
悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退などの消化器系の副作用や注射部位反応(紅斑、掻痒感、疼痛、腫脹など)
頻度は高くはないが重要な副作用
脱毛症、胆石症、急性膵炎、低血糖、アナフィラキシー、イレウス
当院のメディカルダイエットの対象となる方
南流山内科トータルクリニックでは、メディカルダイエットの対象を肥満の基準である BMI25以上の方に限定しています。BMI25未満の方に投与する場合は以下のリスクが考えられるためです。
健康リスクの増加
過度なやせ(BMI18.5未満)では健康リスクが高まることが知られています。栄養状態が悪化し、筋肉量の減少(サルコペニア)、免疫力低下、皮膚トラブル、月経異常が危惧されます。
副作用のリスクの増加
お示ししたGIP/GLP-1受容体作動薬の副作用はBMIの高い方を対象にして得られたデータです。肥満度の低い方では、より高頻度又は新規の副作用が出現する可能性があります。
当院のメディカルダイエットの流れ
状態の確認と評価
初診時に、現在の身長、体重、BMI、既往歴、内服中のお薬、生活習慣などを詳しくお聞きし、血液検査を実施し全身状態を評価します。1年以内の健康診断の結果がある場合は、お持ちください。血液検査を省略できる可能性があります。
血液検査の結果も併せて、総合的にメディカルダイエットの施行の是非を判断します。当院では血液検査は外注になるため、再診時より治療が開始となります。健康診断の結果をお持ち頂いた場合は同日より治療を開始できる可能性があります。
| 初診料 | 3,000円 |
|---|---|
| 再診料 | 1,000円 |
| 血液検査 | 5,500円 |
運動療法・食事療法の重要性
巷で言われている様に、GIP/GLP-1受容体作動薬は楽して痩せられる魔法の薬なのでしょうか?そんなことはありません。減量の背中を押してくれるにすぎません。そしてGIP/GLP-1受容体作動薬で食事に対する介入はできますが、運動に対する介入はできません。運動療法を怠ると筋肉量が低下し、リバウンドのリスクが高まるだけでなく、不健康な体になってしまいます。以上から、特に運動は非常に重要です。当院では初診時に食事療法と運動療法のリーフレットをお渡しします。
副作用やリスク
詳細は、GIP/GLP1受容体作動薬の副作用を参照してください。ご不安な点があれば、診察時に遠慮なくご相談ください。
投与スケジュール
副作用の抑制のために最小容量の2.5 mg/週から開始し、忍容性と効果を見ながら、薬剤量の調整を行います。
通院頻度
月1回程度が目安です。副作用の有無や日常生活で困っていることなども、その都度ご相談ください。
継続/中止の判断
減量が進んできたら、いつまで薬を続けるか、どの程度の体重を維持目標にするかを一緒に検討していきます。必要に応じて徐々に減量・中止し、生活習慣での維持を目指します。
GIP/GLP1受容体作動薬の費用(税込み)
| 用量 | 投与頻度 | 1か月(4本分)の費用 |
|---|---|---|
| 2.5 mg | 週1回 | 15,800円 |
| 5.0 mg | 週1回 | 25,800円 |
| 7.5 mg | 週1回 | 32,800円 |
※いずれも自由診療(自費診療)となり、保険は適用されません。
※初診料・再診料・検査費用などは別途必要となります。
メディカルダイエットがお勧めの方
- BMIが高く、食事、運動だけでは減量が難しいと感じている方
- 内臓脂肪が多く、生活習慣病(糖尿病・脂質異常症・高血圧など)や心血管疾患が心配な方
- リバウンドを繰り返しており、「医学的なアプローチを取り入れたい」と考えている方
- 忙しくて運動時間がとりにくいが、できる範囲で生活改善も頑張りたい方
メディカルダイエットを受けることができない方
以下に該当する方は、原則として治療を行うことができません。
- 1型糖尿病の方
- 妊娠中、授乳中の方、近く妊娠を希望されている方
- 重い胃腸疾患(重度の胃腸障害、消化管閉塞など)がある方
- 過去に膵炎を起こしたことがある方や、現在膵炎が疑われる方
- 過去にこれらの薬剤や類似薬で重いアレルギーを起こしたことがある方
- 甲状腺髄様がんの既往や、MEN2(多発性内分泌腫瘍症2型)の家族歴がある方
- 重い肝障害や腎障害など、主治医が不適切と判断した場合
※また、すでに多くのお薬を服用されている場合には、相互作用や低血糖リスクを慎重に評価する必要があります。
メディカルダイエットの注意点
特効薬ではない
薬だけで劇的に痩せるわけではなく、食事・運動など生活習慣の見直しとセットで取り組むことが重要です。
長期的な視点が必要
急激な短期減量ではなく、数か月〜1年単位で「無理なく続けられる体重管理」を目指します。
やめたあとのリバウンドリスク
使用中は食欲が抑えられますが、中止後に元の生活習慣に戻ると体重も戻りやすくなります。薬を使いながら、「食行動・生活リズムを整える」ことが大切です。
副作用やリスクを理解したうえで開始すること
特に、悪心・嘔吐・下痢・便秘などの胃腸症状、まれな膵炎・胆のう疾患などについては、事前に十分な説明を受けてください。
よくある質問(Q&A)
GIP/GLP-1受容体作動薬にはどのような製品がありますか?
マンジャロ®、ゼップバウンド®が使用されています。
メディカルダイエットは、保険は使えますか?
当院で実施しているメディカルダイエットは「自由診療・適応外使用」となります。そのため、薬剤費・診察料などは全額自己負担となります。
どのくらいの期間続ける必要がありますか?
目標体重や現在のBMIにもよりますが、少なくとも数か月単位で継続することが多く、半年〜1年程度を目安にするケースもあります。短期間だけ使用しても体重が元に戻りやすいため、「どこまで体重を落とすか」「どのくらいの期間で維持していくか」をご相談しながら決めていきます。
痩せたあと、薬をやめても大丈夫ですか?
減量後に薬を中止すること自体は可能ですが、中止後は「以前の生活習慣に戻さないこと」が重要です。
急にやめると食欲が戻り、リバウンドしやすくなるため、
- 用量を段階的に減らす
- 食事・運動の習慣を整えてから中止する
など、計画的に終了していくことをお勧めします。
他のダイエット薬やサプリメントと併用しても大丈夫ですか?
一般的なビタミン・ミネラルサプリとの併用は大きな問題になりにくいと考えられますが、食欲抑制剤・脂肪吸収抑制剤・海外製サプリメントなど、成分が重複したり安全性が不明なものもあります。
併用を希望される場合は、事前に必ず成分表をご提示のうえご相談ください。
年齢制限はありますか? 50〜60代でも受けられますか?
年齢だけで一律に制限することはありませんが、
- 心臓・脳血管疾患の既往
- 腎機能・肝機能
- 他のお薬との兼ね合い
などを総合的に見て、安全に使用できるかを判断します。
50〜60代の方でも、全身状態が安定していればメディカルダイエットの対象となり得ます。
将来妊娠を考えている場合、メディカルダイエットは受けられますか?
妊娠中・授乳中は使用できません。また、妊娠を希望される場合は、一定期間薬を中止してから妊娠に備える必要があります。
妊娠を計画している方は、治療開始前に必ず医師へご相談ください。
